ニーズウェルIPO お見事な事業承継

ニーズウェルは、コンピュータシステムに関する金融を中心とした業務系ソフトウェアや組込み系ソフトウェアの企画・設計・開発及び保守・運用、ネットワークやサーバの基盤構築、ソリューションの提供、等の情報サービス事業並びにこれらの付帯事業を営んでいる会社です。

公開価格は1,670円(引受価格は1,536.4円)、PER10.6倍(2017年9月予想EPSによる)という水準で、2017年9月20日に上場しました。

ファウンダーで、代表取締役会長が2017年5月15日にお亡くなりになっています。目論見書によると、上場直前の段階で筆頭株主は、創業家の資産管理会社で、持株比率は47%でした。登記簿謄本によると、この資産管理会社は、2014年3月に設立されています。目論見書には、この会社へのニーズウェル株式の移動の開示がないので、設立直後に移動が完了していると思われます。

2017年7月18日に、近親者2名に対し相続によりそれぞれ160,750株の株式の移動が行われています。この移動により、各10%の持分を保有するにいたっています(上場直前の持株比率)。

ところで、この相続の株式評価額はどのように決定されるでしょうか?

財産評価基本通達には、公開途上にある株式は、「株式の上場又は登録に際して、株式の公募又は売出し(以下この項において「公募等」という。)が行われる場合における公開途上にある株式の価額は、その株式の公開価格(金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われるブックビルディング方式又は競争入札方式のいずれかの方式により決定される公募等の価格をいう。)によって評価する。」とあります(財産評価基本通達174条)。

公開途上にある株式とはなんでしょう?

財産評価基本通達は、公開途上にある株式を「金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式」としています。課税時期(つまり被相続人がお亡くなりになった日)は2017年5月15日、上場承認日は2017年8月14日なので、課税時期時点では公開途上にある株式ではなく、取引相場のない株式だったいうことになります。もし8月14日から9月19日までの間が課税時期であったなら、評価額は公開価格の1,670円となり、2016年9月期末のPBR468.86円と比較しても相当に割高です。ましてや課税時期が上場後ということになると、市場株価を基準に評価額が決定されるので、大変なことになっていたかもしれません。

IPOの際売出しされたのは株式を相続した近親者2名で、それぞれ税前で1億円ちょっとのCashを手にしていますが、この売出しは相続税を支払うために行われたのかもしれません。

非公開会社の段階で相続し、相続税は上場後の高くなった株式を売却して支払う。やろうと思ってもなかなか計算通りにいかないものですが、見事です。

ちなみに創業者の後継社長は、社外から来られた方で、2016年12月に社長に就任されています。この方現在66歳、次期社長を選び、しっかりとバトンタッチすることを含めて委ねられているのかもしれません。

しっかりと考えられた事業承継と相続、素晴らしいとは思いますが、簡単に真似できるものではありませんよね。

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