HANATOURの親会社に関する開示
HANATOUR JAPANは、訪日外国人向けツアーの地上手配を中心とする旅行事業、貸し切りバス・免税販売店・ホテル施設などの運営事業を行っている会社で、2017年12月15日に上場しています。
HANATOUR JAPANには、韓国国内において旅行業を展開している親会社HANATOUR SERVICE INC.(韓国取引所及びロンドン取引所に上場)があり、上場前で70%、上場後で51.09%の持分を有しています。上場審査上、親会社を有している場合、国内又は海外で上場している等、親会社の情報が開示されている状況にあることを求められますが、親会社HANATOUR SERVICE INC.は韓国及びロンドンに上場しているのでこの点では問題になりません。
子会社は、親会社のために少数株主の利益を犠牲にする取引を行う可能性があるため、子会社の上場審査については、親会社やそのグループの企業内容の開示などの状況を勘案し、子会社の少数株主の利益保護を重視した要件を加えています。
上場申請会社が「親会社等」を有している場合には、申請会社は取引関係等を通じて親会社等から様々な影響を受けることが考えられるため、親会社等との取引関係等の情報は、投資者にとって有用な投資情報となります。そのため、親会社等との取引関係等について、申請会社に及ぼす影響の重要性に応じて、その内容を「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」の【関係会社の状況】、【事業等のリスク】等に分かりやすく記載されているかどうかが確認されます。
また実際の審査においては、例えば、取引関係であれば内容、金額、取引条件及び取引条件の設定方針等について、役員の兼任関係であれば兼任役員の氏名、役職、兼任理由といった点について、受入出向であれば受入出向の人数、申請会社における役職の状況、業務の安定的な遂行の見地からみた従業員の確保の状況に関する考え方を中心に、必要に応じて適切に記載されているかどうかが確認されます。また、親会社等の企業グループ内に申請会社の事業内容と類似している事業を営んでいる会社が存在する場合等には、親会社等の企業グループにおける申請会社の役割・位置付けについて、その記載内容が確認されます。
HANATOUR JAPANの【事業等のリスク】には以下の記載があります。
上場申請会社が「親会社等」を有している場合、親会社等と申請会社の少数株主との間には潜在的な利益相反の関係があると考えられます。このため「子会社上場」の上場審査に当たっては、申請会社の少数株主の権利や利益が損なわれないことが求められる等の理由から、親会社等からの独立性確保の状況について、次のa~cの基準に適合しているかどうかを確認されます。
a 新規上場申請者の企業グループの事業内容と親会社等の企業グループの事業内容の関連性、親会社等の企業グループからの事業調整の状況及びその可能性その他の事項を踏まえ、事実上、当該親会社等の一事業部門と認められる状況にないこと。
b 新規上場申請者の企業グループ又は親会社等の企業グループが、原則として通常の取引の条件と著しく異なる条件での取引等、当該親会社等又は当該新規上場申請者の企業グループの不利益となる取引行為を強制又は誘引していないこと。
c 新規上場申請者の企業グループの出向者の受入れ状況が、親会社等に過度に依存しておらず、継続的な経営活動を阻害するものでないと認められること。
HANATOUR JAPANの場合、【事業等のリスク】の記載は、このa~cの基準をクリアしていることを強調したものになっているように思います。
なお、一般的には、上場会社のガバナンス上、特定の親会社等が大きな影響力を持つのは望ましいものではなく、親会社等による出資比率を下げる、親会社等の役員と兼職をする役員を減らすなどの対応を図り、新規上場会社が独自の経営を行えるような形態に移行していくことが望ましいと考えられます。